山小屋大作戦
(1997.7)


 この作戦が始まったのは、もう5・6年前になるでしょうか。

 そのころ、私はほとんど生活の余裕を失っていました。
 来る日も来る日も、仕事仕事仕事。仕事に明け、仕事で暮れる、そんな毎日でした。
 ホントは、その仕事に生き甲斐を持てたら幸せだったのでしょうが・・・。

 これは、そのころ、雑誌で知り合った人への手紙です。

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前略

 早速のご返事ありがとうございました。
 まず、封筒の厚さに圧倒され、そこにHさんの思いを感じ取ることができました。
 お手紙を読み進むうち、ひしひしと共感を覚え、共に夢の実現に向け協力していけたらと思いました。

 私も取り敢えず、自己紹介などをさせていただきます。
 生まれ、育ちは日野市です。(昭和×年に生まれました。)仕事の関係で2年程名古屋に住んだことはありますが、その他はずっと東京です。
 東京でも昨年の3月まで、足立区のマンションに住んでおりました。事情で日野の実家に引っ越して来ました。今後は、ここに暮らし続けることになると思います。

 仕事先は、○○です。安給料で毎日ピーピーしています。
 私が今のような思いにかられるようになったのは、そんなに昔のことではありません。ここ5〜6年の仕事の変化と、足立区でのマンション暮らしがきっかけであったように思います。 
 今の職場に異動したのは6年程前ですが、それまでは10年程地方におりました。そこでは自分の時間を作ることができ、20代という若さもあってか、それなりに暮らしておりました。

 しかし、今の職場に来てみると、途端に生活パターンが変わってしまいました。連日、連夜の残業、残業。終電で帰る日々が続き、1週間のうち家族とゆっくり顔を合わせるのは日曜だけ。当然、コミュニケーションも少なくなりました。
 毎月100時間を超える残業、それも20時間を超えると、あとはいわゆるサービス残業。周りでは、体をこわして長期に休む者、堪えきれずやめていく者、いやはや何のために生きているのか、人生とはいったい何なのか、いやでも考えさせられる毎日でした。

 とは言いながら転職もせず、いや、転職もできず淡々と同じところでサラリーマンを続けている自分がいることも事実で、何ともやりきれない思いがしました。 
 改革を求めているにもかかわらず、一方で安定を求める、何とも矛盾した自分に何度ため息したことでしょう。

 2年程前のそんな時です。自分の欲するものは何か、手掛かりでもないかと神田の本屋街を歩いておりました。そこで「田舎暮らしの本」を見つけたのです。タイトルを見て、これしかない、と思いました。爆破によるビルの解体シーンを逆回ししたように、今までもやもやしていた私の考えが、この本のタイトルに凝縮したように感じました。
 単純な職場とマンションの往復の生活が、私の中にあった自然への思いをいつしか覆い隠し、悶々とさせていたのかも知れません。自然が思い切り欲しくなりました。

 相変わらず仕事漬けの生活ではありますが、取り敢えず今のセクションは、夜の8時か9時になれば職場を出られる状況にあり、更に週末は大体休めるようになったことで、時間的に余裕が生まれてきました。
 そこで、今の生活の安定を維持しつつ、他のこと・・そう自然と戯れる時間を作ろうということになりました。
 1日でも早く、大自然の下、リフレッシュできる時間、そしてその空間がほしいと願っています。

 自然との関わり合いの方法なら、いろいろあると思います。旅行するのもよし、山歩きもいい、畑を借りて土に触れることもいい、・・・かも知れません。
 でも私はもっと大きなスケールで自然が欲しい、と思います。
 山あり、谷あり、川ありの大自然が自分のものだったら、どんなに爽快か、と思うのです。何でも自分の自由にできる、他人に縛られない広大な自然が欲しいのです。
 もちろん、その手に入れた自然を壊すなどという気は毛頭ありません。自分の判断で自由にできる、という「可能性」が魅力なのです。

 しかし、私個人でこのような自然を手に入れることは、はっきり言って無理です。
 そこでこじんまりとした山の一角でもいいから、取り敢えず手に入れたいと考えておりました。そして、そこは、自然のままの土地がよく、そこに、自分の創作によって自然と調和した小屋を作り、そして、そこに、こじんまりとした畑や遊び場を作る。
 そんな開拓のような体験を楽しみたい、と考えていました。

 しかし、Hさんのスケールには驚きました。これが実現したら素晴らしいでしょうね。是非、私も一緒にやらせていただきたいと思います。
 確かに、田舎に入って行くには、様々な地元の抵抗もあるでしょう。雑誌にも失敗例が沢山出ています。その点、同じ田舎でもリゾート地として開発された地区ならば比較的安心して利用できるでしょう。が、値が高すぎます。
 気の知れた仲間で広い土地を手に入れ、共同利用していくのが、現実的であるのだと思います。
 取り敢えずHさんのAからMまでのご意見について、思いつくままに私の考えを書かせていただきます。

A 私も宝くじでも当たらない限り、これからも今の職場に勤め続けるのではないかと思っています。でも、もしも自然との暮らしの中で生活の糧を得る手段を見いだせたなら、どうなるかわかりませんが・・。
  専業農家については、私はやっていくだけの金も力も自信もありません。

B 定年後のことは、はっきり言って、まだ、考えていません。でも、仕事がなくなって、その途端、やることがない、などという人生はいやですね。
  店も考えました。でも、やはり私には何もノウハウがありません。畑でとれたものなどを、郵パックを使って捌く方法(無店舗販売)なんかを考えたことはあります。

C 確かに知り合いのいない場所でひとりでやるより、気心の知れた家族と協力してやっていけたなら最高ですね。特に仲間の中にその土地に定住する人でも出れば、とても心強くなりそうです。

D 将来の日本の食料不足については何とも私にはわかりません。が、いざという時のために、最低レベルでもいいから自給できる環境にあれば、この世の中に恐れるものは無くなるのではないでしょうか。

E 自然は空気みたいなものですね。無くなると無性に欲しくなりますし、体や心にも支障が生じてくるようにも思います。

F 大自然を丸ごと手に入れるのは大賛成ですね。青森、岩手なら坪1000円以下の土地が手に入りそうですが、ちょっと遠いのが難点です。雪も大変でしょう。しかし、春から秋に利用するのだ、と割り切れば、一つの選択肢ではあるかも知れません。

G 農家物件(農地)は、住民票を移さないと入手できない、と聞きましたが、何かよい手だてはあるのでしょうか。

H 山梨県の山林を共同購入したグループの記事を雑誌で読みました。山林を共通エリアと個人エリアに分け、ある面では協力し、ある面では個人で自由に活動しています。こんな姿がいいですね。

I 資金さえ許せば、活動場所は何カ所もあった方がおもしろいでしょう。 
 それに、仲間が増えれば、いろんな情報が入ってくるかも知れません。

J 栃木県の土地は比較的安いようですね。
  先日、山梨県で坪8000円の物件がありあした。私としては、足の便を考えると、なんと言っても山梨県が魅力です。

K 足がかりとする宿泊場所は絶対に必要ですね。何かと役立つでしょう。

L 同感です。

M 何だか、夢が実現しそうな気分になってきました。

 同じ志を持つ仲間が沢山集まれば、それだけ夢が早く実現するでしょう。
 ただ、ちょっと心配なのは、30人〜40人規模となった場合、一つの行動を起こすのにも大変ではないかと思います。せいぜい同一行動をとるには10人くらいが限度ではないかと、思うのですが・・・。
 もっとも、活動の方法次第なのかも知れません。例えば、会報誌のようなものでグループを維持しておき、土地を共同購入する時、そのグループの中からサブグループを募る・・・というような方法ならば、グループの人数は多い方がうまくいくのかも知れません。

 都会人が自然〜田舎に関わるには、やはり仲間と資金が大きな要素となるでしょう。
 仲間を集めることは簡単といえば簡単です。(本当は一番難しいのかも知れませんが)取り敢えず仲間が集まったとすれば、あとは資金ですよね。
 私も余裕はありません。しかし、考えるのはただですから、将来に向けていろいろアイデアを蓄えておきたいと思っています。

 そこで、とにかく小規模の土地でスタート。そこで得られた作物などを販売して、その資金を元手に次のステップに行く。こんなことを考えています。当然、本業以外の作業が必要となる訳ですから、忙しくなるでしょう。でも、それが楽しみながらでき、更に収入につながる、というのなら最高ですよね。
 例えば、山にキーウイ、クルミなどあまり手の掛からない果物の木を植え、販売するのもいいかも知れません。これなら家族での作業も可能でしょう。沢山仲間がいれば、その仲間を販売ルートにしても良いかも知れません。得られた収入は、共有資金としてプールし、次のステップに活用すればいいわけです。
 
 ところで、私が作ったクラブを紹介させていただきます。
 これはまだメンバー2人のクラブですが、目的はちょっと大げさかも知れませんが「クラブ員の幸福の追求」としています。そのためには、あらゆる活動をしよう、ということですが、具体的に何をやるか、ということはまだ決まっておりません。究極的には、大自然に囲まれ、クラブ員が、自由に楽しく過ごすことができる王国のようなものができればいいな、というふうに思っています。でも、そこに行き着くには先は長そうーです。
 今後、クラブとしても仲間を見つけると共に、活動資金を作ることを考えねばならないと思っています。
 ・・・・・
(一部省略)

 今年は、庭の片隅に畑を作り、ほかにプランターなどを利用して、花や野菜を作ってみたいと思っています。今は生ゴミを利用した堆肥作りと、室内で種を蒔いて苗作りに取り組んでいるところです。いずれ、この経験が役立つことがあるでしょう。

 また、話は変わりますが、「田舎暮らしの本」に対する私の投稿に3件のお便りをいただきました。

 1件は、兵庫県の方からのお誘いで、その気があれば土地を用意するので兵庫県に来ませんか、という嬉しい便りでした。しかし、今の仕事をやめて、あちらに行く勇気が出ず、丁重にお断りしました。 

 2件目は、カナダの土地を買いませんか、というものです。確かに、広くて安いのですが、私にとってはあまりに現実離れしています。やはり、週末にちょっといけるところがいいですね。

 3件目は、つい先日、品川区の方からお便りをいただきました。やはり切実に自然を求めていらっしゃる方です。この方は、大島や三宅島への人事異動の希望を出していらっしゃるとのことでした。
 ・・・・・・
 (一部省略)
 
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 こんな文面が、まだまだ続いていましたが、あとは省略します。
日付は平成5年1月1日になっています。
 とにかく、このころから熱い想いで自然を求めていました。

 というような過去をひっさげて、翌年、平成6年5月、とっても小さいけど念願の土地を手に入れました。
 結局、スタートはひとりになってしまいましたが、今、徐々に仲間が増えています。
では、これから、私が今実際に行っている山小屋作りをご紹介します。



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